2014/12/18

「東京マタニティ」のレコーディング

今年2014年の[Dodidn*]は、提供できた楽曲が非常に少なかった点で、残念に思っています。
自宅スタジオのサウンドの核となる部分を機材的に替えたりいじったりしたため、そのチューニングに追われた面があって、公表した作品の数としては少なくなってしまいました。
来年度においては、今年の楽曲数を早い時期に上回ることをお約束いたします。

さて、「東京マタニティ」
ムード歌謡オリジナル・ソングであるこの曲のレコーディングは、既に始まっており、レコーディングとしては残すところ数パートとなっています。完成は来月頃となりそうです。

レコーディング済みの全体アレンジをアナライザーでチェック
当ブログ「東京マタニティ―そのラテンのざわめき」で紹介した通り、ドラムセットはFXpansionの「BFD 3」を使用しました。ムード歌謡なので出音はかなり地味です。
バスドラ、スネア、タム、ハイハットをパラではなく一纏めに録りました。ピアノと同様、ドラムはそれぞれの鳴りの干渉が逆に生っぽさを演出するので、この方が都合が良いのです。プリセットのスネアを他のスネアに差し替えて鳴らしました。
その他のリズム系パートは、ボンゴとコンガで、これにさらに別のパーカッションが加わりますが、それはパーカッション奏者・紺野秀行さんのレコーディングとなり、年内にレコーディングを済ませる予定です。

それからこれは、私の個人的な思い入れなのですが、この「東京マタニティ」のパートに、当初予定になかった“トロンボーン”をプログラミングして加えました。この曲のホーン・セクションでは、トランペットやバリトン・サックスとのアンサンブルとなります。
今年の9月、専門学校での恩師・河辺浩市先生が亡くなりました。河辺先生の思い出については当ブログ「河辺浩市先生のこと」で触れています。先生の、トロンボーンを演奏する姿を偲び、敢えてトロンボーンを加えてみたのです(非力な演奏で河辺先生には怒られるかも知れませんが)。

残されたレコーディングについては、後日終わり次第、ブログします。

2014/11/20

「仰げば尊し」のリマスタリング

2013年春に制作し、アップしていた唱歌「仰げば尊し」を、この度リマスタリングしました。

今年の夏以降の、自宅スタジオにおける様々な試み(オーディオ・インターフェースのチェンジや外部ワード・クロックの導入など)によって、サウンドが良くなったという面を具体的な形で示す意味合いと、新しくなったマスタリング・ツール「OZONE 6」(当ブログ「OZONE 6の使用テスト」参照)を実践的に試す目的で、今回リマスタリングをおこないました。

結果から言うと、今回、リマスタリングのための下ごしらえとして、ミキシングの段階から修整しました。もちろん、パートの変更やヴォーカルのテイク変更などは一切おこなっていません。
ただし、ピアノとヴォーカルの定位関係を改善したいと思い、ピアノの低音部そして高音部の振り分けを施し、ヴォーカルの存在感を際立たせることにしました。逆に言えば、ピアノにはよりいっそう“伴奏役”として脇にまわってもらった形となります。

それから一部、当時のPro Tools 10内で使用していたプラグインが使えなくなっていたため、それらを別のプラグインと差し替えたわけですが、そうなってくるとダイナミクスのバランスがけっこう崩れてしまうので、ほとんどのプラグインを差し替えての調整となりました。
このミキシングの修整で一番重要だったのは、ピアノとヴォーカルそれぞれのだぶついた低域をカットすることでした。

「仰げば尊し」におけるマキシマイザー設定
こうしてやり直してバウンスしたミックス・ファイルを、新規のプロジェクトで改めて読み込み、マスタリングの作業を開始しました。使用したプラグインは前段にIK Multimediaの「Master EQ 432」、後段にiZotopeの「OZONE 6」です。

オリジナルのマスターでは、だぶついた低域があったせいもあり、またマキシマイザーの効きが良すぎたせいもあって、本来おとなしめのピアノがヴォーカルと同じように前面にしゃしゃり出ていたわけですが、そうしたサウンドのディテールを改め、今回のリマスタリングでは、ピアノとヴォーカルの音像の位置関係を重視し、あまり音圧を上げず、それぞれのパートのピークがはっきり分かるようなサウンドに仕上げました。

既にミキシングの段階でトータル・コンプをかけているので、マスタリングの段階ではこれ以上コンプをかけて音圧を上げることはせず、マキシマイザーでのプロセッシングでは、IRCでのナチュラルなリリース・コントロールを選択。音圧の壁にならないよう注意しながら調整しました。

エキサイターで緻密な熱量を加える
こうした調整を施したあと、エキサイターでユニークな効果を思いつきました。

まずミッドに切り替えて、ヴォーカルの中低域を“Dual Triode”で熱量を加え、Master EQ 432もミッドに切り替えて17kHzを少し持ち上げます。
そしてOZONE 6に戻り、エキサイターのサイドに切り替えて、高域を“Tape”で熱量を加えます。
つまり、ヴォーカルを際立たせるため、ピアノに対するエキサイターの効果の質感を変えることで、全体の空気感が特徴的かつ立体的になるのです。
ただしこれは、あくまでちょっとしたさじ加減の調整であり、やり過ぎるとミキシングでの効果が台無しになります。意味もなくいじるのではなく、具体的な指標に沿っておこなうべきだと思います。


2014/11/13

東京マタニティ―Cubaseとの関係

ムード歌謡オリジナル・ソング「東京マタニティ」のプログラミングがほぼ終了した段階ではありますが、Cubaseでの打ち込みに関する個人的な補足をしたいと思います。

「東京マタニティ」のMIDIプログラミングは、Steinberg Cubase 7.5でおこないました。これまで使用していたCubase Artist 7からプログラミングの直前でアップグレードしたのです。

私自身はこれまで述べてきた通り、MIDIプログラミングはCubaseで、レコーディング以降の行程はPro Toolsに移して作業しています。それぞれのソフトウェアの強みと弱点を鑑み、今もこのやり方がベストだと思っています。
私の音楽制作の行程でMIDIプログラミングを担うCubaseについては、昨年まで、“ミドルレンジグレード”と称するCubase Artist 7で十分だと考えていました。ところが。

今年の春、「せつおちゃんのバースデー」のプログラミングの中途の段階で、結論としては、〈もはやCubase Artist 7では自身の制作を担えなくなっている、不十分だ〉と思い知りました。

それにはいくつかの理由がありました。
まず一つ、Cubase Artist 7のインストゥルメントトラック数の制限は32。「せつおちゃんのバースデー」の当初のアレンジ・プランでは軽く32パートを超えていたので、このインストゥルメントトラック数の制限で壁にぶつかり、これを超えるいくつかのパート(特に木管系)の編成をやむなくキャンセルしたのです。

Cubase 7.5のキーエディター(ピアノロール画面)
もう一つ、スコアエディターの制限。
最近顕著に思うことは、オリジナル曲の楽譜化の要請です。
Cubase Artist 7は基本機能しかなく、やはり楽譜化においてはフル機能が必要だと感じました。

それから、OMFの読み込みと書き出しが、Cubase Artist 7ではできないこと。先述したように、私はCubaseでレコーディングやミキシングはしませんが、例えば、他者がマルチ・トラック・レコーディングしたオーディオファイルを聴きながら、追加トラックとして新たにMIDIプログラミングしなければならない時、OMFの読み込みができないと、非常に不便なのです。

こうした理由があって、自身の制作面も進化してきた経緯もあって、Cubase Artist 7→Cubase 7.5へとアップグレードした次第です。

*

ところで、これとは別の、まったく個人的なCubaseに関するトラブルも、今回解消しました。それは、いくつかのVSTプラグインが読み込みできなかったこと。

これは以前から抱えていた問題だったのですが、とても使いたいソフトウェアなのに、Cubaseで読み込みできないので、なくなくレコーディング間際のPro Tools上で簡易的に使うしかなかったという持病的トラブル。

原因は簡単なことでした。それらのVSTプラグインのアップデートファイルが、別のフォルダーに作成されていたため。つまり、本来Cubaseソフトウェアが読み込んでいるVST Pluginフォルダーには、アップデートされていない数年前の古いファイルが置かれているだけだったのです。
アップデートされた新しいファイルを、本来のフォルダーにコピペしたところ、この問題が解消されました。CubaseでもそのVSTプラグインが使えるようになったのです。プラグインのアップデートの際、その処理を1箇所の統一したVST Pluginフォルダーに指定すること。これが重要だったわけです。

2014/11/05

「魚の賛歌」の新しいヴァージョンについて

ニュー・ヴァージョンで使用されたソフトウェア「iris」
ムード歌謡オリジナル・ソング「東京マタニティ」の制作途中、ひょんな成り行きで楽曲「魚の賛歌」(作曲は自己批判ショーの小菅節男氏)の新しいヴァージョンについての構想を思いつき、この新しいヴァージョンの「魚の賛歌」の一部のレコーディングを既に終えています。

ニュー・ヴァージョン「魚の賛歌」は来年の早い時期に完成&公開予定です。

ということで、「魚の賛歌」と新しいヴァージョンについてのご説明をいたします。

私ことUtaroが20年以上前に在籍していた、劇団スパゲッティ・シアターでの公演の劇中歌であった「魚の賛歌」を、2年前つまり2012年にリメイクしたわけですが、それはある程度、オリジナル(1993年)に準じたアレンジでした。

今回の新しいヴァージョンというのは、オリジナルともリメイク版とも準じていない、リミックス的な、そういうものです。
2年前にリメイクした際に、いずれリミックス・ヴァージョンを作ろうと思っていたのですが、残念ながらそのリメイク版を制作した作業データ(レコーディングした複数のオーディオ・ファイルなど)は、ちょうどその直後にPCのトラブルに直面し、結果的に作業データは抹消されてしまいました。

残されたのは、リメイク版のマスターのみでした。
したがって、思い描いていたリミックス・ヴァージョンを作ることができない、ということになっていたのです。

今回の新しいヴァージョンは、そのたった一つ残ったマスターの音をサンプラーにかけて、波形を分解しながらいくつかのループ・フレーズとドローンを抽出し、基本的なバッキングを構成する形で、これに新たなヴォーカルや別のパートを加えるものとなり、リミックスではなく、完全なリレコになります。

ドローン音源として使用された「PRISM」
現時点ではヴォーカルがどのようなものになるか、具体的に述べることは避けますが、抽出した際のサンプラーはiZotope「iris」を用い、その他のサンプルはNative Instruments「PRISM」を使いました。「iris」の抽出はランダム性に長けた面があり、非常に面白い想像を超えたループを形成することができるので、私はよくこのソフトウェアを使います。

「魚の賛歌」リメイク版マスターから抽出されたループ等は、オリジナルを想起することが不可能なほど「魚の賛歌」とは別物となっていて、逆にヴォーカルのパートでは「魚の賛歌」を想起させる、というアレンジになるわけですが、構成に関してはこのようにややこしい話になってしまいます。

ぜひ、この新しいヴァージョンの「魚の賛歌」の完成をお待ちいただければと思います。
うーん、最後にもう一つだけヒント。
ヴォーカルのパートはまったく新しく入れ直します、が…。
それとは別に、先に紹介した「iris」を用いて、なんと1993年オリジナル・ヴァージョンの(20代になりたてだった頃の!)私のヴォーカルを抽出して、これを加える、予定です。あくまで予定ですけれども…。

どうぞ、お楽しみに。

2014/10/30

OZONE 6の使用テスト

アップグレードされたiZotope OZONE 6
iZotopeのマスタリング用ソフトウェア「OZONE 6」が公表されましたので、早速テストしてみました。

振り返ってみますと、私が初めてOZONEを使い始めたのは2007年頃で、まだその頃はOZONE 4でした。
それ以前はハードウェアのT.C. electronic Finalizer PLUSを使っていまして、マスタリングに関わる基本的なエフェクトがこれ1台でまかなうことができた優れものでした。OZONEはそれと非常によく似ていたので、すんなりOZONE 4に移行することができました。

ここ1、2年は、マスタリングでは他のソフトウェアを使っていて、ミキシングで追い込んだファイルを、とてもシンプルな調整で済ませるやり方をしていました。
これはある意味、OZONEを反面教師としたからです。

というのも、OZONEのような、オールインワンのソフトウェアを使ってしまうと、マスタリングで必要以上にサウンドを作り込むことができてしまうので、場合によっては、本来最も大切な行程であるミキシングで手を抜いて、OZONEに任せてしまおうと思ってしまうのです。

ただ、前ヴァージョンのOZONE 5に関しては、中間にコンプやエキサイターを挿すと、微妙に音が濁る傾向があったので、それが理由で使わなかったのですが、今回久しぶりにOZONEを開いて、そのアップグレードされたOZONE 6を試してみることにしたのです。

まず何より、前ヴァージョンよりも画面が横幅に広がったGUIは好感が持てます。とてもシンプルで落ち着いています。色彩も派手さとけばけばしさがなくなり、かなり彩度を下げた感じの、モノクロームに近い印象です。

横に広がった分、隙間が生じて見やすくなり、アイコンなどもモジュール化された分かり易いサインに置き換わって、直感的にそのエフェクトへ移動できます。モジュールでは、どうやら他社のプラグインを好きなフロー位置に挿すことができる(スタンドアローンでの使用)ようで、OZONE 6ではマスタリング用リバーブが用意されなかったのは、そのせいだと思われます。ともかく、一切無駄なデザインを排除しているし、特に波形が綺麗なので、視覚による調整も精緻にできるかと思われます。

EQセクションの画面
OZONEではM/SとL/Rの選択が可能なことが、このソフトウェアを好んで使うマスタリング・ユーザーの大きな嗜好要素となっています。EQにおいてはアナログとデジタルの選択、ハイパスやローパス、シェルフ、ベルの選択であるとか、さらにその下でフラットかレゾナントかブリックウォールかの選択もでき、さすがにマスタリング用としてはずば抜けた機能のEQです。

マキシマイザーに関しては、最もシンプルであるとさえ思います。
近年、一時期流行ったような安っぽい過剰な音圧上げの傾向は冷ややかになり、過剰に音圧を上げることへの抵抗感も増して、むしろ音質の温かみやレンジ感が重要視されるようになっています。マキシマイザーは最後の最後の、ほんの一押しの熱量に過ぎないのだと考えれば、OZONE 6の種も仕掛けもないマキシマイザー部のシンプルさにも頷けます。その代わり、ディザー部の重要性は言うまでもありません。

シンプルで見やすくなったマキシマイザーのセクション
OZONE 6は必ずしもミキシング後に使われるとは限らないことも含めて、ラウドなサウンドに作り込む場合や、きわめて微量の補整にとどめる程度の使用法まで、柔軟に対応することができそうです。
個人的には、エキサイターがかなりブラッシュアップされているように感じられ、これまでは少しクセがあって嫌みだった感じが改善されていて、自然で違和感のない付加効果が期待できます。

サウンドを総合的に判断すると、もちろんそれぞれのエフェクターで過度に色づけするやり方は別として、非常に透明感のある、目立ちすぎず自己主張を抑えた、裏方に徹した感さえあります。一言で表現すれば、OZONE 6は大人になったなあと。

サウンドが透明になった分、やはりミキシングでの音作りが剥き出しとなるので、ミキシングで手抜きをするとすぐにばれる、という面はあります。
OZONEですべてお任せ下さいませ、なんでもよくしちゃいますよぉ、というこれまでのスタンスではなくなり、ミキシングでやるべきこととマスタリングでやるべきことの分業はきっちり責任を持ってやりましょうね、というスタンスに変わった、というべきかも知れません。

2014/10/14

デジタル・クロックの第一歩の改善

TASCAM DA-3000(下の機材)
新たな曲作りに向けての、デジタル・レコーディング・システムのメンテナンスの一環で、デジタル・マスター・レコーダーの「TASCAM DA-3000」を導入しました。

大方、この機器を導入する目的というのは、2chのDSD録音、それからAD/DAコンバーターとしての役割の部分でしょう。もちろん私もそこに強い関心を持っていますが、導入の第一の目論見は、「ジッターの改善」にありました。

ジッター(jitter)とは“揺れ”のことです。あらかじめ決められた周波数(48kHzとか96kHz)によるデジタル・サンプリングのタイミングの精度(周波数を刻む精度)によって、録られた音を再生する変換時のタイミングと誤差が生じ、聴感上のノイズとなります。この誤差が大きければ大きいほど、ノイズもそれに比例します。

サンレコのゴウ・ホトダ氏のコラム
そもそも私がデジタル・クロックにおける制御や同期の問題、ジッターの影響について知ったのは、90年代半ばのことです。雑誌『SOUND & RECORDING MAGAZINE』(1996年12月号・リットーミュージック)のゴウ・ホトダ氏のコラム「世紀末に向けて」で、「デジタル・レコーディングに対する常識、そして観点(前編)」がその教示となり、その3ヵ月前の同コラムでも、「ハード・ディスク・レコーディングの功罪」というテーマでジッターの影響問題について述べられていました。ともかく私はそこで初めて、そういう概念を知ったのです。

2年ほど前、私は発振回路に関する実験で「SLEEPIN」という曲をやりました。学研の電子ブロックでコンデンサによるブロッキング発振回路を組み、それをリズムにしてみたのです。人間が手を叩いてリズムを刻むよりも不精確で、だんだんとタイミングがずれていきます。いかに水晶発振が精確に時を刻むかということが分かります。

DA-3000はTCXOの搭載で精度1ppmです。これは100万分の1の誤差になります。室内の常温では、もう少し誤差が小さくなるようです(電源を入れて10分以上経過すれば、クロック精度が安定するらしい!)。
尤も、水晶ではなくイリジウムだのなんだのに関しては、さらに誤差が小さくなるわけですが、機材としては大変高額になります。

とりあえず、当面においてはこのDA-3000の導入によって、そのクロック精度改善の第一歩を果たし、これまでより高音質でレコーディングをおこなっていくつもりです。

2014/10/11

EMI TG12345

アーサー・ロー氏と伝説のコンソール(写真集より)
アビイ・ロード・スタジオの輝かしい歴史を綴った写真集『Abbey Road: The Best Studio in the World』の中に、世界のミュージシャンのポテンシャルを引き出して已まなかった、伝説のコンソールが写っている写真があります。それはモノクロームの印象深い写真です。

1972年、BBCのTVドラマ「Dad's Army」の出演者Arthur Loweがリラックスして肘をついているコンソール――それがアビイ・ロード・スタジオの伝説の、「EMI TG12345」です。

私がまだPro Toolsを使い始めて間もない頃、何か良いEQプラグインはないだろうかと探し求め、出合ったのが「EMI TG12412」と「EMI TG12414」でした(当ブログ「Abbey Roadプラグインについて」参照)。録り終えた生々しいサウンドをこれらのプラグインに通すことによって、何か劇的な、研磨された音楽的なサウンドに変化した最初の驚きを憶えています。

先日、WAVES版の「EMI TG12345」をインストールし、早速テストしてみました。
これは先の2つのマスタリング用のEQ&フィルターとは違い、ミキサーのモジュールのチャンネル・ストリップ型になっているのですが、“それらしき”位相歪みが加わって、Pro Toolsの生々しいサウンドではなくなります。

DYNAMICSセクションのコンプとリミッターは、いわゆる現代的なそれとはまったく違い、“旧式の”と言いたくなるような、持ち上がり具合と叩かれ具合に特徴のあるサウンドに変化します。HOLDのつまみをうまく調節すれば、非常に味のあるコンプ効果になり、エレキギターやドラムなどのサウンドに使いたくなります。

EMI TG12345プラグイン
EQセクションのTREBLE、BASSに対してPRESENCEの中域は500Hzから10kHzまでの可変式となっており、「EMI TG12412」のスポット式ではありません。この「EMI TG12345」のEQは、実にもっともな、まっとうで音楽的なサウンドを作り出す生真面目なEQであり、どこかの安物プラグインEQの単なる“レトロ調”とはまったく違います。

さらに好みでDRIVEを持ち上げれば、いやらしいほど古臭い電子部品を通ったサウンド、とでも言いたい歪んだサウンドになり、原形をとどめません。私の好みでは、DRIVEの加減よりもNOISEの量を上げて、少しざらついたサウンドにする方が好きです。

当然ながら、この「EMI TG12345」を通ったサウンドに「J37 Tape」プラグインを用いれば、完璧なと思えるほどアビイ・ロード・スタジオのサウンドになる、というわけです。