2016/12/01

「Shrike and Duck」のフォルムとモーション

「舞踏のための音楽プロジェクト」第6弾の「Shrike and Duck」について。モズとアヒルをモチーフにした、舞踏的ドタバタダンスのためのインストゥルメンタル。シンセサイザー、Teenage EngineeringのOP-1とRoland JD-Xiによるサウンド。

こういう趣旨の曲を手掛けている時がいちばん楽しいとつくづく思うのですが、つい昨日、テレビ番組の録画でたまたまコント55号(萩本欽一さんと坂上二郎さん)のコントを観ていて、はっと思いました。
坂上二郎さんがある「日常的な動作」をして、それに対してああだこうだと萩本さんに無理難題な突っ込みを入れられ、自ら動作に手を加えていく二郎さん。この時既に、最初の「日常的な動作」は変形し、動作に手を加えていくたびにその変形がさらなる変形となって、もはや「日常的な動作」の形はなく、非日常的な、まったく「奇天烈な動作」に変貌を遂げていく可笑しさ。
これを観ていて、まさにこれこそ、かつて舞踏家・土方巽氏が作り上げてきた舞踏のメタモルフォーゼなのではないかと気づきました。コント55号のコントで重要なのは、人が「動く」ということ、あるいはその想像を超えた「動き」の面白さであり、舞踏家・土方がおこなってきたことも同様に、規定概念や理屈を超えた「動き」(うごめき)であったかと思います。彼らが同じ昭和のある時代の先駆者であったことを考えると、時代の中の人々が抱えていた、「超えようとして超えられないもの」を彼らが舞台で体現してくれた、ということは言えるのではないでしょうか。

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さて、話は大きく変わって、「Shrike and Duck」のマスタリングにおけるちょっとしたこと。
以前にも書いたとおり、この「舞踏のための音楽プロジェクト」では、Steinberg WaveLab Pro 9を使ってマスタリングの作業をおこなっています。特にマスタリング・ツールのmaster Rigが素晴らしく、自在に入念にサウンドを整えることができます。
そうしたツールで処理をしていく前段階で、是非やっておくべき処理があります。クリップの頭と尻のフェード処理です。
曲のイントロがどのように始まるかは千差万別ですが、バーンと鳴って勢いよく始まるにしろ、ゆっくり弱い音で静かに始まるにしろ、フェード処理はしておく必要があります。特に小音量でモニタリングしている場合は分かりにくく要注意で、実際、ファイルを再生した瞬間から(音を録音開始した瞬間から)何らかのノイズがかぶっているものなのです。

波形をズームアップしてフェード処理の確認をする
通常の波形の状態では、クリップの頭と尻は無音だと認識してしまいがちですが、ためしにクリップの波形を大幅にズームアップしてみてください。これでかなり小音量の部分が拡大され、無音だと思われていた箇所が実は無音ではなかったことが分かります。このままだと、もし出力の高いモニターで再生した時、はっきりとノイズが聴こえてしまって処理が雑であることがばれてしまいます。
なので、マスタリングの処理の下ごしらえとして、クリップの頭と尻をきれいにフェード処理し、出力の高いモニターで再生しても聴感上恥ずかしくない形に整えます。

再生ボタンを押して何秒でイントロが始まるか、具体的に決めます。だいたい1秒前後だと思いますが、舞台などで使うソースとしては、トリガーの反応の兼ね合いで、1秒前後だと遅いことがあります。そういうソースの場合はコンマ何秒、ということになります。
イントロまでの秒数が決まったら、その間、つまり再生開始からイントロの出だしの音までを、フェード処理することになります。これはWaveLab Pro 9では実に簡単な処理で、その間を範囲指定し、フェード・イン又はフェード・アウトをクリックすれば、見事に綺麗な波形になります。フェードの曲線はいくつか種類があり、任意でそれを指定することができます。これらの処理はあくまで見た目の波形をズームアップしておかないと確認できないので、必ず波形をズームしてからおこないましょう。

音楽というのを、動物のフォルムやモーションと考える。「動き」には「間」というのがあって、その「間」のとり方次第で、フォルムが変わる。ここでいう音楽の「間」とは、その曲のイントロとアウトロを包み込む、クリップ上(ファイル上)の開始と終わりの秒数であり、再生開始からイントロまでの「間」、アウトロから再生終わりまでの「間」のことで、それが綺麗か綺麗でないかで曲のフォルムが印象づけられてしまうということ。美しく始まり、美しく終わるにはどう「間」をとったらよいか、これも音楽を思考する上での一つの要素だと思います。

2016/11/17

画像を音にした「Romanesque」

「舞踏のための音楽プロジェクト」第5弾は「Romanesque」。この曲の全般の制作を振り返りたいと思います。

レコーディングされた「Romanesque」のオーディオ・クリップ
ホームページのコラム「身体とRのインヴェンション」で書いた通り、この曲の前半部は舞踏家・土方巽の“身体画像”を用いて、それを音に変換してオーディオ・クリップをコラージュしています。一つは生写真そのままの画像、もう一つは色調を変え、赤と青のグラデーション処理を施した画像、さらにもう一つは別の調子のグラデーション処理をした画像の3画像をそれぞれMIDIデータ化して変換しているのですが、このままだと変換したデータは長尺でだらだらとしてしまうので、Pro Tools上で部分的にデータをカッティングして、それぞれピアノ(ホンキートンク・ピアノ)、ウッドブロック、シンセ・パッドの音源で鳴らし、UNIVERSAL AUDIOのNeve 88RSチャンネル・ストリップでコンプ&EQ処理を施しつつ録りました。
後半で突然現れるリズムは、Teenage EngineeringのOP-1です。これにRoland JD-Xiのヴォコーダー・プリセットを使って、私がフェイクを吹き込み、Pro Toolsでレコーディングしました。既にレコーディングの段階であのようなディストーションをかけ、ミキシングの段階でかなりコンプレッションしています。

SLATE DIGITAL VBC FG-REDコンプ
ミキシングでは主に、Waves CLA-76(2つのリビジョン:BLUEY、BLACKY)とSSL G-Channel(SSL 4000G)の組み合わせでコンプ&EQ処理をしました。しかもこの「Romanesque」では一切、ミキシング時に空間系のエフェクトを使用しませんでした。それぞれのパートのコンプ&EQ処理の仕方を変えることで、立体的なミックスを作り上げることができます。
センター位置に近い位置で鳴るピアノのパートはやや深めのコンプをかけ、鋭い高域成分を抑え、左右に広がっているウッドブロックのパートは逆にやや浅めのコンプ処理、高域もある程度フラットにすることで聴感上浮き上がって聴こえ、ピアノと相対的なレンジのバランスを取っています。こうすることで中央のピアノはやや重心が低く、左右の装飾リズムは反対に軽めの音になるので、全体が立体的になるのです。

トータル・コンプの肝、Waves J-37 Tape
トータル・コンプはSLATE DIGITAL VBC FG-RED、SSL G-Channel、そしてWaves J37 Tapeの組み合わせ。これまで何度も使用してきた、2MIX用定番の組み合わせです。全体の粒を揃え、低域と高域の過不足を整え、デジタルのガッツリしたサウンドをJ37 Tapeで聴き易く抑え込む。マスタリングの行程を控えているから、あまりここでレベル的にサウンド的に追い込まないようにするのがコツです。追い込みすぎると、ここまでで築いた立体的なサウンドが台無しになり、それぞれのパートの持ち味を失ってしまいます。冷静に、着実に。石橋をたたいて渡ること。

2016/11/03

失踪した身体―「Disappearance was Body」

ツィンバロムのパートのピアノロール画面
「舞踏のための音楽プロジェクト」第4弾は「Disappearance was Body」

ソロで踊るためのもの、それも今プロジェクトの“身体表現”の核心に迫るようなもの、というコンセプトから、この曲は4分50秒ほどで構成されています。
タイトルの通り、テーマは「失踪した身体」で、半音階を用いたゆっくりとしたメロディで何かできないかという発想から、そのメロディの音源はツィンバロム(Cinbalom。ハンガリーあたりで用いられる打弦楽器)で、と決まりました。このツィンバロム音源はモデリング音源ソフトウェア、MODARTT Pianoteq 5 PROのCimbalom Balázs Kovácsであり、そのプリセットは“Cimbalom soft”を使用しています。

Native Instruments KINETIC METAL
Cubaseでプログラミングしたのはこのツィンバロムに加え、機械的なサウンドを装飾したKINETIC METAL(Native Instruments KOMPLETE 11のKONTAKT音源)のプリセット“Humming Top”、UVIソフトウェア・シンセのPX apolloのプリセットの“Poly Love”、そしてKOMPLETE 11のKONTAKT音源のUNA CORDA。UNA CORDAは以前より使ってみたかった音源だったのですが、この度のKOMPLETE 11へのヴァージョンアップでようやく使用することができました。これら計4パートが「Disappearance was Body」のすべてのパートとなります。

Native Instruments UNA CORDA
ツィンバロムのメロディに対応し装飾的なパートとなっているHumming Topの特殊な機械音。それらの背景で目立たず、この曲の中でドローンのように存在しているのがUNA CORDA。UNA CORDAはDavid KlavinsとNils Frahmが開発協力した一本弦によるアップライトピアノで、その響きは実に独特です。この曲に関して言えば、メインのツィンバロムを支える脇役的存在となっています。

テーマの「失踪した身体」についての言及はここでは避けますが、ツィンバロムによる半音階のメロディと、特殊な機械音の反復がこのテーマのイメージを構成するものであり、これによってどのようなソロの舞踏が為されるのか、舞台への想像が已みません。

2016/10/26

「It Comes Love That Hangover」の空間処理

「舞踏のための音楽プロジェクト」第3弾「It Comes Love That Hangover」のミキシング。その空間処理について。

Waves SSL 4000E
Teenage Engineering OP-1で構築したベーシックなリズム隊は、実にドライかつファンキーで、空気感をほとんど持たない超低域と高域成分に寄り固まった、サウンド的には非常に処理のしづらいパートとなっていました。
これらを補整していくかたちで処理をするより、それを逆手に取ってしまった方が、この曲の特徴になるかなと考え、ドライはドライのまま、中域成分も敢えて持ち上げず、耳に痛い帯域を削る方向で処理をしました。ただし、ベースのフレーズの低域成分があまりにも超低域に寄っていながら、それがとても音量的に弱かったので、200Hzあたりをブーストし、低域を可聴周波数にまで引き上げてはいます。

これらの処理をしたプラグインは、Waves SSL 4000Eのチャンネル・ストリップ(SSL E-Channel)です。もはや私は今、ほとんどのパートをこのチャンネル・ストリップで処理してしまっています。

周波数的なバランスで言えば、このままだと中域がやや浅くなって簡素しすぎてしまうので、JD-Xiによる他のパートで中域成分を占有してもらうことにより、全体の周波数バランスを整えています。一部のパートにはモジュレーションを付加し、左右をうねるようにしたり、薄い中低域を補うかたちで、フェイジングがかった処理でステレオ感を出すなど、ベーシックなリズム隊に対してのバランスを取っています。
ちなみにコンプ処理で言うと、そうした装飾的なパートに対してはほんのちょっと長めのリリース・タイムを設定し、OP-1のベーシック・リズム隊はそれよりもリリース・タイムを短くして、中央で聴こえるベーシックなリズム隊は音像的に厚みを持たせ、左右で聴こえる装飾的なパートはやや平たくすることによって、全体のサウンドの立体的な構造として「中央を頂点にした三角形」がイメージできると思います。もしそれぞれのリリース・タイムを逆に設定すると、左右の厚みが増し、「逆三角形」のような構造になるわけです。どちらが曲に適しているか、それをあらかじめ判断した上で、コンプ処理をするということになります。

Waves H-Reverb
空間系のエフェクト、すなわちリバーブは、今回特に少ないながら活躍しています。この曲での空間系はすべて、Waves H-Reverbでまかないました。
私の頭の中では、こういったファンキーな曲に対しては、Lexiconのリバーブを使おうとすぐに思い立ちます。Lexiconのリバーブはサウンドが派手で、明るい印象があります。特に短いリバーブ・タイムの返しなどは、明るいサウンドでなければリズムが引き立たないのです。
Waves H-Reverbはそういう特徴も兼ね備えています。とても機能的で万能なプラグインです。今回、ごく一部のパートに、ゲート・リバーブ系のプリセットで空気感を付加しました。ドライなベーシック・リズム隊に時折短めの残響が重なって聴こえてくるのは、このH-Reverbのゲート・リバーブです。そのサウンドがやはり派手なので、このリバーブ自体もリズムの一部となるわけです。ゲート・リバーブにはそういう効果があります。

2016/10/20

「It Comes Love That Hangover」での即興的構築

「It Comes Love That Hangover」のオーディオ・クリップ
「舞踏のための音楽プロジェクト」第3弾は「It Comes Love That Hangover」というタイトルの曲で、とても軽快な曲となります。

最初にこの曲のベーシックなリズムを打ち込んだ小型シンセ、Teenage Engineering OP-1は、今年の3月に完結した「OP-1を使ったサウンド・インスタレーション」などでかなり使い込んでおり、すっかり懐知れたシンセでもあるのですが、こちらはさらに多様性のフェーズを上げ、そのベーシックなリズム隊に対し、Roland JD-Xiでの装飾的なフレーズやパーカッションをオーバー・ダビングして付け加えたものとなり、相互の特徴的なサウンドがうまく噛み合ったのではないかと思っています。

Roland JD-Xi
そのOP-1で、何の脈略もなく、まずテンポを設定し、それからリズムにおける反復的なフレーズをある程度即興を交えながらOP-1内に記録し、それに合わせてさらに2トラック多重録音して、計3トラックで出来たベーシックなリズム隊は、この段階において、後々ダビングされて積み上がっていくある種の強力なグルーヴをまったく想像すらもしていません。それが作曲のマジック、あるいは作曲の不思議な現象と言えるのかもしれませんが、このベーシックなリズムを打ち込んでそれをしばらく放置していた中で、ある時、“二日酔いのパフォーマンス”というコンセプトが頭に浮かび、JD-Xiでダビングしている段階には既に、そのコンセプトを意識して演奏しています。こうしてPro Tools上のオーディオ・トラックの数は、合わせると6トラックとなりましたが、実際に聴こえてくる音色の数はそれを上回っています。

「舞踏のための音楽プロジェクト」で括られたすべての曲のサウンド、すなわちある程度共通した質感のサウンドを作り出すため、録りではNeve 88RSプラグインのチャンネル・ストリップで処理すること、ミキシングでは概ねWaves SSL 4000Eプラグインのチャンネル・ストリップを使用、という自己ルールを設け、これに沿ったかたちで作業を進めます。
「It Comes Love That Hangover」のレコーディングでも、OP-1のベーシックなリズム、それからJD-Xiのいくつかのパートの処理もNeve 88RSプラグインが使われました。ちなみにこの曲の制作の場合、一切MIDIデータを扱っていません。すべてオーディオ・クリップ単位の作業です。

もし、この曲をあらためてMIDIプログラミングでやるとしたら、大変なことになります。すべてのパートを分解し、スコアを起こして、一つ一つ打ち込んでいったら、かなりの時間を要するでしょう。トラックの数も倍以上になると思います。OP-1プラスJD-Xiというシンセの組み合わせは、もっと利便的に合理的に、むしろ音楽の創造に富んだ素晴らしいパートナーであると私は実感しています。

2016/10/13

「Evolution and Civilization Water」のミキシング

Sonnox OXFORD REVERB
「舞踏のための音楽プロジェクト」そのオープニング曲「Evolution and Civilization Water」のミキシングについて解説します。

この曲の肝は、紺野秀行さん(自己批判ショー)に演奏していただいたケンケニ(書き忘れていましたが、このパートのレコーディング時ではSHURE PG56マイクロフォンを使用)と、シンクラヴィア系のシンセ・パッドの組み合わせによる流れの途中で、パッドが高らかな和音を奏でる箇所であり、この和音はオクターブをいくつか超えた和音なのですが、この音がいかに緊張感をもって抑えられることなく、“高らかに”、鳴り響くかがミキシングの段階で重要でした。
ほとんどのパートで使用したSSL 4000E

実はほとんどのパートでは、Waves SSL 4000Eのチャンネル・ストリップがインサートされていて、このパッドもそれによるEQとコンプの処理をしています。あまり深いコンプレッションをせず、サウンドを浮かび上がらせるためには、その他のパート(ここではケンケニ)とのバランスを取ることで解決させます。それ自体を持ち上げるのではなく、片方を下げる手法です。今回はケンケニのレベルを下げるのではなくて、EQで余分な低域を削り、結果的にはパッドとの相対的な音量差になっています。

とにかくもともと、この曲のすべてのパートがとてもラウドで、放っておくと全体の低域量が物凄いことになって耳に痛いので、個々のEQで相応の低域カットやフィルターを入れています。逆に高域をブーストしたパートがあまりなく、そのあたりは意外にもナチュラルな状態になっています。

ケンケニで使用したEventide Tverb
ケンケニの空間処理では、EventideのTverbを使用しました。これは主にルーム系のリバーブなのですが、設計がユニークでかなり面白い空間処理ができます。ここでのケンケニに対してはシンプルに、タイトなルーム感を付加して、先述したシンセ・パッドとのバランスも考慮しています。あまり大きな反射音を付加してしまうと、ケンケニの方が浮き上がってしまうからです。

その他のパートの空間処理では、Sonnox OXFORD REVERBの「EMT 140 2.4 sec」プリセットを使用して、4.5秒によるプレート感を引き出しました。冒頭から中盤にかけての、SoundBow音源で形成したリズム、例のパッドなど独特なプレート感(=空気感)になっていると思います。

2016/10/05

micro ARRANGERを使った作曲フォーメーション

KORG micro ARRANGER(2012年撮影)
4年ぶりくらいに、すっかりしまい込んでいたシーケンサー機能付き鍵盤「KORG micro ARRANGER」を再び引っ張り出してきて、寝床のすぐ傍に設置完了したのは昨日のことです。これを再び利用しようと思い立ったのには、理由があります。

そもそも「KORG micro ARRANGER」とはいったい何か。KORGの広告の見出しを借りれば、“コンパクトな作曲アシスト・キーボード”。600種を超える音色と30以上のドラム・キット、簡単にバッキングを構築するためのスタイル、いわゆる多種多様な音楽ジャンルのパターンがプリセットされており、コード機能も充実。16トラックのMIDIシーケンサーで記録可能(データはSDカードに記録)。鍵盤はミニ鍵盤で61鍵。5Wのスピーカーも搭載。まさに作曲とアレンジをアシストする便利なキーボード、といった感じです。

これを私が購入したのは2011年だったか、YAMAHA QY-700に代わるシーケンサーを探していて、「KORG micro ARRANGER」なら打ち込みできるかなと思ったのですが、少し使ってみて挫折。ソフトウェアのCubaseの方が遙かに使い勝手が良いので、シーケンサーの問題はそれで解決したのと同時に、「KORG micro ARRANGER」はそれ以来使わなくなり、眠ったままになっていたのです。

今回再び引っ張り出してきたのは、全体の音楽制作のうちの、作曲活動の部分のフォーメーションを担ってもらおうというのが主旨。

作曲というのはリズム・パターンから始めるか、コード進行から始めるか、メロディから始めるかの3つのうちのどれかになるわけですが、例えば小型シンセOP-1なんていうのは、コンパクトでどこにでも持ち運びできて、リズム・パターンが簡単に作れて記録することができ、後でPro Toolsでレコーディング、という流れが実にスムース。作曲からレコーディングを通じたオーバーダブのアレンジが勢いよくできてしまう効果があります。

ところが、これまでCubaseを主体にしていた場合、PCでDAWを立ち上げるのにどれだけ時間を浪費するか(経験した人ならよく分かると思いますが!)。これからCubaseを使って作曲を始めるというのに、無駄な時間浪費と共に雑念が入り込み、音楽に対するある種のひらめき感とか高揚感が下がってきてしまうというデメリットが生じます。
また、作曲活動の一端であるiPhone内のヴォイス・レコーダー・アプリで貯め込んである膨大な鼻歌的メロディの断片の整理というか処理について。これをもう少しきちんと作り込んでからCubaseで作業できたらいいなと思うことがしばしばありました。

こうしたことから、目の前にあるキーボードでスイッチさえ押せばすぐにでもメロディでやコード、あるいはリズム・パターンのアイデアを試すことができ、かつ記録することができる「KORG micro ARRANGER」。スピーカーがあるからわざわざヘッドフォンを用意する必要もない。煩わしい雑念が入り込む余地なく、すぐにアイデアをストックしておくことができる点で、「KORG micro ARRANGER」の利用は大きなメリットがあるように思います。もちろん、そのストックしたデータを用いてCubaseでの本格的な制作作業に移行するまでの、アシストに徹底した役割です。