2016/05/25

ハチプロ・プロジェクト始動

オリジナル曲「rain rain rain―雨の記憶」打ち込み画面
「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクト。マルチ・ティンバー音源の名機Roland SOUND Canvas SC-88Proのみの音源で曲作りをするというプロジェクト。

SC-88Pro、“ハチプロ”と聞いて多くの人が思い浮かべるのがレイ・ハラカミさんではないかと思うのですが([Utaro Notes]ブログ「レイ・ハラカミと作る音楽の思考」参照)、このプロジェクトの初っぱなではまず、ハラカミさんがハチプロ音源でどうアプローチしたかを理解したいと思い、少し“それらしい”曲を打ち込んでみました。さすがにピッチ・ベンドを多用すると、もろハラカミさんの曲を真似ることになってしまうのでそれは避けることにし、ハラカミさんが一つの手法としていた、ディレイを使って浮遊感を出す――というアプローチを追体験してみることにしました。

曲名は「rain rain rain―雨の記憶」(Utaro作詞・作曲)。アコギのコード・プログレッションにハチプロのインサーション・エフェクト“Stereo Delay”がかかったイントロ。
打ち込んでからディレイをかけるのではなく、あらかじめディレイをかけておいて打ち込みました。

ハチプロ実機に使われたCANAREケーブル
ハラカミさんも「ディレイありき」だったそうです。ちなみに彼は、システム・エフェクトの“Pan Delay 1”をよく使っていたらしく、ハチプロのディレイ音に対して「ヌケがすごく良い」というようなことを言っていたようです。ハチプロのエフェクトの構造は、おおまかに2タイプあって、一つは個別のパートに挿入するインサーション・エフェクト(64種類)、もう一つがセンドの数値で送り込むことのできるシステム・エフェクト(リバーブ系8種、コーラス系8種、ディレイ系10種)があって、インサーション・エフェクトをかけつつ、システム・エフェクトにセンドすることもできます。“Pan Delay 1”はこのシステム・エフェクト内のディレイに当たります(“Pan Delay”は1~4の計4種類)。また、2バンドのイコライザーもあって、パート別にON/OFFすることができます。イコライザーのパラメーターはLowが200と400Hz、Highが3kHzと6kHzとなっています。

さて、「rain rain rain―雨の記憶」の打ち込み作業はいつもどおりCubase Pro 8で、この段階ではVSTのSOUND Canvas VAを使って計5パートを打ち込みました。SOUND Canvas VAはとても使い勝手が良く、当然ながら実機よりも素早い音色切り替えやエフェクト設定ができます。
アコギのパートに挿入した“Stereo Delay”ですが、やはりヌケが良く、気持ちいい掛かり方になります。フィードバックのモードはCrossで、左が360msecで右が500msecという数値にしました。この左右の数値によって独特のリズムが生まれ、ここから算出してテンポを確定しました。まさに「ディレイありき」のやり方です。

Pro Toolsで録られたハチプロ実機音源の各パート
Pro Toolsでのレコーディングでは、プロジェクトのルール通り、実機の音源を使いました。2年前に購入して以来、ハチプロの実機には、古い安物のケーブルをつないでいましたが、今回2本のケーブルを買い換え、CANAREのQC01をアナログ・ミキサーMackie 1604-VLZ3に送りました。ハチプロのアウトはRCAなので、ケーブルはRCA/フォン仕様となります。
Pro Toolsへの入力時にはコンプを薄めにかけ録りしましたが、各パートのSOUND Canvas VA上の設定を実機で完全に再現した上で録っているので、アコギのディレイの掛かり方などもほぼ同等だと思われます。VSTの音源ではやや透明感がありましたが、実機からアナログ・ミキサーへ、そしてデジタルI/Oでコンプをかけ録りした段階での質感は、ヌケの良さはそのままで、やはり少し芯が太くなった音となり、これもほぼ予想通りでした。

このように、プロジェクトの最初の実験段階を終えたのですが、いわゆるVSTでの打ち込み作業、それからレコーディングでの実機を使ったアウトプットの録り、という作業のいずれもうまくいきました。この段階までに感じた、個人的な感想をいくつか述べたいと思っていましたが、それは次回に譲ることにします。

2016/05/17

ハチプロをメインディッシュに

SOUND Canvas VAプラグイン
90年代後半、私にとって憧れのマルチ・ティンバー音源だったRoland SOUND Canvas SC-88Pro(1996年発売)。単純に高価だったせいもあり、手が届かなかった音源でした。
この憧れの実機を入手したのは2年ほど前で、今まで何の活躍もなくストックのまま眠った状態でした(当ブログ「SC-88Pro音源のストック」参照)。
昨今ではDAWでいくつもの音源ソフトウェアを扱うことに慣れてしまい、DAWを取り巻くPC上の環境が、どんどん膨張していくことに違和感というか危機感を抱いたりもしています。また一方で、これだけ複数の音源ソフトウェアを扱っていながら、ここで使いたいと思うスタンダードな楽器音色(例えばギロだったりアゴゴだったりアコーディオンだったり、あるいはエレキ・ベースだったり)が、実はほとんど足りてなかったりして、あれ?と思うことがありました。

Roland SOUND Canvas SC-88Pro(通称“ハチプロ”)はそうしたスタンダードな楽器音源をほぼ完璧に網羅していると言え、これが自在に使えたらいいのに、と2年前に入手したわけですが、やはり今頃の音源ソフトウェアの使い勝手と比べると、デモ段階から使うのには、ガクンと制作効率が落ちてしまうデメリットがありました。
ところが昨今、Rolandさんの大英断によってiOSプラグインが発売されたり、SOUND Canvas VAというVSTi & AUプラグインが発売されたりする流れを見ると、プラグインを併用すれば、そのデメリットの部分が解消されるではないかということに気づいたわけです。

所有するSC-88Pro実機
そこでちょっと実験的に、ハチプロ音源のみの曲作りを試してみたくなりました。CubaseでのプログラミングではSOUND Canvas VAプラグインを用いて曲作りをおこない、Pro Toolsでのレコーディングでは実機の音源を用いる、というやり方。もともと私は90年代にこうした一体のマルチ・ティンバー音源のみで曲作りすることに慣れているので、その原点に帰るという意味もあり、また憧れのハチプロのみで一体どんなサウンドになるのか、非常にワクワクする気持ちになります。

題して、「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクト。

[Dodidn*]ホームページにページを立ち上げましたので、今後、字数を増やしていくつもりです。もちろんそのデモ曲もアップしていく予定です。このプロジェクトの肝は、ハチプロ音源のみ! ということで、ご期待下さい。

2016/05/11

「明日の燈を」オケのレコーディング

前回お伝えした通り、新しいヴァージョンの「明日の燈を」の制作。現時点でオケのレコーディングを終了しています。

Cubaseでの打ち込み作業が完了して、全パートのMIDIデータをファイルに書き出し。それから、全パートの音源の詳細(どのソフトウェアのどのプリセット音色を使い、どんな設定にしたか)を紙に記録して、それを作業用の資料とし、Pro Toolsでのオケのレコーディングの際にはそれを見ながら、各パートの音源を再現していきます。もちろんPro Toolsの新規のプロジェクトを立ち上げた際に、書き出ししておいたMIDIファイルを読み込むところから始めます。
音源を紙に書いて記録するというのは、面倒くさい作業のように思えますが、後々の様々なトラブルが起こった時に、こうした紙の記録がどれほど役に立つか、PC上のファイルが仮に消滅したとしても、紙の記録があればその分の復元ができます。Pro Toolsで各パートのレコーディングを終えた段階でも私は、そのレコーディングしたデータを“レコーディング・シート”として紙に記録します。これもまったく同様の理由です。私はずっとアナログのテープ時代から紙の記録を重要と位置づけています(これまで、どれほど紙の記録に助けられたか数えきれません)。

Pro Toolsで録られたオーディオ・クリップ
今回のレコーディングの作業自体はこれまで通り、とてもシンプルです。録音のフォーマットは32bit浮動小数点/96kHz。各パート(オケは全17パート)のソフトウェア音源は、一旦アナログ出しして16chアナログ・ミキサーMackie 1604-VLZ3を経由。こうして一旦、アナログを経由して音をまろやかにしておいてI/Oで戻します。この音をPro Toolsでオーディオ化します。この際、音源にかかっているリバーブはOFFにして録ります。

ところが今回、何故か私はこの作業でコンプの掛け録りをするのを完全に忘れていました。本来なら、Pro Toolsに戻して録る際にコンプを浅く掛けて録るのですが、この手段を完全に忘れていたのです。したがって、Pro Toolsで記録された各パートのオーディオ・クリップはノンエフェクトの状態になっています。今後、ミキシングの際に少し深めにコンプを掛ける必要があるかも知れません。

オケのすべてのパートのオーディオ・クリップが並んだ状態で、仮のパンニングとフェーダー調節をしておいて、次回のヴォーカル録りに備えます。全体では当然リバーブがかかっていないので、Cubaseで作業を終えた段階のデモと比較すると、余韻のないゲンナリした違いはあるのですが、音源の音の出方としてはほぼCubase上と同等であることを確認してレコーディングの作業を終えました。

2016/04/27

「明日の燈を」ニュー・レコーディングのご報告

私にとって曰く付きのオリジナル曲が、「明日の燈を」です。1998年に作詞・作曲して以来、翌年に完成→ノイズが多く失敗。2010年に再録→これも失敗。そして4年前の2012年にも再録、という経緯ですが、実はこの2012年のヴァージョンもひどい出来。
むしろ過去の再録の中で最もひどい出来だったのではないかというのが、2012年ヴァージョンです。少なくとも私自身はそう認識しています。

1999年オリジナル・ヴァージョンについては、ホームページのコラム「『明日の燈を』について」で触れています。まずはそちらを読んでいただければと思います。そのうえで話を先に進めますと、そうした流れで再チャレンジしたはずの2012年ヴァージョンだったのに、出来が悪い…。結果的にはあまりにもオリジナルとかけ離れてしまった、という印象があり、非常に粗野な作りになっています。

この4年間、どこかでやり直したいなと思っていました。なかなかそのタイミングがやって来なかったのですが、今回、つまり2016年、もう一度「明日の燈を」をやり直すことにしたのです。

*

Cubase Pro 8で「明日の燈を」を手直し
まず、手始めとして、元々の1999年オリジナル・ヴァージョンの時のMIDIデータのファイルをもとに、YAMAHA QY-70の音色にほぼ近いQY-700で鳴らしてみました。もちろんQY-70とQY-700は同じYAMAHAのシーケンサーで兄弟のようなものですから、全体の印象はオリジナルに限りなく近いです。これでいけると一瞬思ったのですが、ただ、サウンドの質感が今一つ、ピンとこない。
それはYAMAHAのAWM2音源に由来する独特なサウンドにあり、複数のパートを同時演奏しても周波数特性的にあまりぶつからず、特にEQ処理しなくても全体が聴けてしまえる利点があるにせよ、言い換えれば不気味なほど中庸すぎるのです。
この中庸すぎるサウンドは、ちょっと面白みに欠け、これをやたらめっぽうEQでいじるくらいなら、他の音源を使った方がいい、という結論に至りました。

MIDIデータのファイルをCubase Pro 8で開いたところから制作がスタートしました。大まかなテンポの修整、各パートのオクターブの修整、ドラムキットのノートの修正。そうしてできるだけオリジナルに近い音色をそれぞれのパートに当てはめていき、さらに各パートのノートの加筆修整を行いました。その後、チェレスタなど新たなパートを追加。Cubase上で仮のパンニング及びレベルのミキシングをおこない、オリジナルのイメージを崩さず、かつ新しい形のサウンドを構成。

と、現時点ではここまで進行。
何故、「明日の燈を」という曲に自分がこれだけこだわり、しつこく追いかけているのか。それについてじっくり考えてみたのですが、どうもそれは、ある程度納得のいく形で曲を完成させるしか、答えが出ないように思うのです。自分がこの曲で何を表現したかったのか。それを発見していく作業となりそうです。

2016/04/14

アルバムのリリース時期見合わせのお知らせ

アルバム『舞踏へ、バニー』のリリース時期をこれまで「2016年夏」と予定していましたが、諸事情により、当面リリース時期を白紙、見合わせることにしました。申し訳ございません。

いったい何が起こったのかと言いますと…なるべく簡潔に説明したいと思います。

話は3月中旬に戻るのですが、3月中旬、自宅スタジオのメインPC内で使用しているPro Toolsで、一部のAAXプラグインが読み込めないことに気づきました。この時点で複数の原因が考えられました。
第一に、読み込めないプラグインのライセンス認証アプリの不具合。第二にプラグインのアプリ自体の不具合。第三にPro Toolsの不具合。
これらを解決するにあたって、まずネットワークの設定をチェックし、ライセンス認証に影響を与えていないかを確認して、余計なネットワークが介在しないよう設定し直しました。その後、各アプリの削除、再インストールをおこないました。ここまでで数日を要しました。
そうしてPro Toolsを起動させたところ、それでもまったく改善できず、一部のAAXプラグインが読み込めない状態のままでした(私はこの時、ある単純なことに気づいていませんでした)。

こうしたトラブルを経験した方なら分かると思いますが、Pro Toolsでプラグインが読み込めないというのは、ミキシング等がまったくできなくなることを意味します。それも主要なプラグインなら尚更です。この緊急事態に私は正直、胃が痛くなりました。

さてこの事態を何とか打破すべく、もう1台のサブPCを使って、ネット検索で情報を掻き集めました。そうしたところ、今度はサブPCの挙動までがおかしいことに気づきました。スタートアップのアプリが起動されないというエラー。
この時私は、たいへんなミスをしでかしました。一部のアプリを削除してしまったのです。そうすると今度はWindows 10がまともに起動できず、セーフモードでしか起動できなくなり、Windowsの復元を試したところ、これがかえって良くなかったらしく、ブラックアウト。その後数日かけてOSの修復を試みたのですが、結局、ハードディスクが完全に読み込めなくなってしまいました。

メインPCでのプラグインの不具合。
サブPCの完全なる消滅。

こうして結局、サブPCの買い換え→膨大なアプリのインストール作業→バックアップファイルの移行に時間を費やされ、今月に入ってようやく元の制作体制に戻ることができ、再びメインPCでの、プラグイン問題の修復作業に取り掛かることができました。

プラグインの問題は実は単純なことが原因でした。プラグインのスタンドアローンを立ち上げたところ、Windowsのある2つのディレクトリが破損していることが分かりました。
そうなると解決方法は簡単で、Microsoftサイトからそれらのディレクトリをダウンロードし、インストール。OSを再起動。これにより、スタンドアローンはもちろんのこと、Pro ToolsでもAAXプラグインを正常に読み込むことができました。

そもそもの遠因としては、Windows 10へのアップグレードの問題やアップデートによる様々な不具合の発生、ということがユーザーを不穏にさせ、それを解消しようと自前で設定をいじくる、というところからかえってトラブルを増幅させてしまう面があるように思われます。OSとしても改善の余地があります。
ただし私の場合、それとは別に、アルバム制作という長いスタンスで制作を抱えていると、どうしてもメンテナンスその他が疎かになっていた、という反省すべき点があったと思います。しかし今回、重要なファイルのバックアップを逐一取っていた点で、かなり救われました。日頃のバップアップの習慣がとても重要であると、あらためて感じました。いつPCが駄目になるか分からないのですから。

話が長くなって恐縮です。
サブPCが駄目になって制作に関わる一部のファイルが消失し、またこの数週間にわたる時間的ロスのため、どうしてもアルバムの完成が夏までに間に合わなくなってしまいました。申し訳ありません。完成時期は今のところ、「未定」です。
しかしこのままアルバム制作は継続しますので、『舞踏へ、バニー』は必ず完成させたいと思います。なかなかご期待に添うことができず、たいへん心苦しいのですが、どうかこれからも応援、そしてスタッフの皆様のご協力よろしくお願いします。

2016/03/10

マラゲーニャの魔法

Cubaseで打ち込んだマラゲーニャの和声進行
オリジナル・アルバム『舞踏へ、バニー』の制作。

数年前、平凡社の『世界大百科事典』を眺めていて偶然、スペインのマラガ地方に伝わるマラゲーニャ(Malagueña)という民謡・舞踊を知りました。そこにマラゲーニャの和声進行が記されてあったのです。

スペインと言えば私にとってシェリー酒!の一言に尽きてしまうくらい貧弱な知識しかありませんが、もちろん闘牛が世界的に有名です。それとは別に、2005年の名古屋での「愛・地球博」を訪れた際、スペイン館のパビリオンの、「セロシア」という陶器でできた六角形の格子窓の建築には驚かされました(ブログ[Utaro Notes]「愛・地球博―スペイン館とフランス館」参照)。

スペイン民謡と聞いて思い出すのが、ジョン・フォード監督の映画『駅馬車』(1939年)に出てくるヤキマという女性が歌うスペイン語の歌。エディット・ピアフのように小刻みに震えるブレスが印象的で、子供の頃、このヤキマが歌う民謡を真似して覚えたものです(ブログ[Utaro Notes]「STAGE COACH」参照)。

そうした個人的なスペインの思い入れを音楽的に表そうと、あるいはアルバムのコンセプトである《舞踏》に、ある種そうした民謡的な要素を加えてみようという意図で、先述したマラゲーニャの和声進行を借用してみようと思ったのです。

Pianoteq 5でタンク・ドラムを使用
曲のタイトルは「Málaga」としました。2分の3拍子、1分20秒ほどの小品です。
Cubaseによって打ち込まれたこの「Málaga」では、アコースティック・ギターの音色でマラゲーニャを弾き、ユニゾンでタンク・ドラムが付き添います。聴けば、いかにもスペイン民謡風なのですが、和声進行としては実に単純で、E→Am→G→F→Eの反復となり、これだけでスペイン民謡風になるとは、まるで魔法のようです。
これにアフリカ民族楽器のリズムを構成し、不穏なるシンセの音で雰囲気をやや暗めのトーンにして、《舞踏》のパフォーマンスに合うようにしました。しかもこれにささやかなるヴォーカルを加えるつもりです。

今回のアルバムにおける、“舞踏のための――”というコンセプトの大前提が、普段ではほとんど思いつかないような作風を引き出し、世界を大旅行する気分で曲作りを楽しんでいます。アルバムとしてはかなり面白い、トピックの多いダンスフルな内容になりそうです。

※追記 メロディを追加した時点で、それに合わせるかたちで調性を変更しました。

2016/03/03

OP-1を使ったサウンド・インスタレーション完結

OP-1を使ったサウンド・インスタレーション第9弾「Ryu」をアップしています。この曲をもちまして、約1年間続けてきた当企画を終了することにしました。これまでのご愛顧ありがとうございます。

「Ryu」もこれまでのルールに則って、音源はOP-1しか使っていません。OP-1のテープ機能で基本となるリズムやパーカッション的なオカズの音、ギター系やパッド系の音がレイヤーされ、Pro Toolsでの録りの段階では、さらにベース音となる音色が追加され、全体としてパワー感のあるリズムになっています。

ベース音をディレイでワイドに広げる
追加されたベース音にはディレイをかましてワイドに広げ、力強いリズムのうねりにベースの存在感が負けないようにしました。また、レイヤー化されたこのリズム隊には、Softube TSAR-1 Reverbの“Vintage Ambience LRG”というリフレクション効果に近いリバーブ・プリセットをわずかに付加しています。

マスター・トラックにおけるプラグイン処理もこれまでとほぼ同様で、EMI TG12345→J37 Tapeという流れになっています。これがここでの統一されたサウンドです。

リズム隊に対する隠し味的リバーブ
ちょうど1年前、OP-1のみを使って、ラジオのジングルのようなものが出来るのではないかと企画を立ち上げ、不定期に作品を作り続けて1年が経過(当ブログ「OP-1を使ったインスタレーション」参照)。結果的に9つの曲を提示することができたことで、一応の完結をみた、と考えています。

気持ちとしては当初、Yosi Horikawaさんの手掛けたJ-WAVEの『Gratitude』のテーマ曲を超えようという意気込みがありましたが、本来ジングルであろうとなかろうと、準備を重ねて丁寧に作り込まなければならないものをたったOP-1だけで、ほとんど即興に近い形で作っていったというのは、果たしていかがなものかという反省点は多々あります。しかし、一方で十分にOP-1はそのモチベーションを最大限に発揮してくれたとも思っています。

何かアイデアに困ったら、OP-1をいじって風変わりなサウンドで風穴を開けよう、と思えるような頼りがいのあるシンセが、私にとってのOP-1です。この企画によって生まれた9つの曲を、今後もぜひ聴き続けて下さい。