侘びの世界へ―Flower's Topology

SC-88Pro音源のストック

Roland SC-88Pro実機
先月に中古で入手した音源モジュールRoland SOUND Canvas SC-88Pro(1996年製)の動作テストとサウンドチェックを、一昨日行いました。

90年代当時、MIDIデータを鳴らすためのマルチ・ティンバー音源として、YAMAHAやRoland、KORG等のメーカーが競ってこの手の音源モジュールを次々と販売していましたが、ある意味、その中で天下を取ったと言えるのがSC-88Proではなかったでしょうか。

《これは進化ではない。革命である》

と広告に堂々と謳ったこの名機は、その後プロも愛用し続けた完成度の高い音源だったのです。

私が行ったサウンドチェックでは、今のところ膨大な1,117音色をすべて試聴したわけではありませんが、ドラムセットを重点的に聴いたところ、想像通り、生っぽくないこの時代特有のデジタル・サウンドの、TR系の音色が聴けたりして、思わずにやけてしまいましたが、個人的にはTR-707が好みです。

これが発売された96年当時を思い出してみると、私にはとても高価すぎてSC-88Proを買うことなどできませんでした。言わば憧れの音源でした。

その4年後あたりでかなりグレードの下がる、かつ安価なKORG NX5Rを買うことができましたが、その頃マルチ・トラック・レコーダーとして使用していたKORG D8(8トラック・ハードディスク型MTR、16bit/44.1kHz)がまた頗るひどいデジタル・サウンドで(ホームページ・コラム「O2R幻影」参照のこと)、これとNX5Rとの組み合わせでは、もうどうにもならないほど貧弱な、骨と皮だけのサウンドといった感じになり、すっかり音楽をやる気が起きなくなったのを覚えています。

だからといって、仮にその時SC-88Proを所有していたとしても、感想は同じだったでしょう。問題の根幹はDC(デジタル・コンバーター)であり、MTRの内部処理能力であり、ミキシングにおけるEQやコンプのクオリティであって、当時の安価な民生機デジタルMTRでは、その一昔前のカセットテープ式のMTRのサウンドにも追いついていなかったのです。

1996年当時の広告
さて、何故今になってSC-88Proなどを入手したか。

それは別に、かつて憧れの対象であった物を所有したくなったという単純な欲求ではありません。
先に述べたDCの問題だとかミキシングのクオリティは、昨今のDAWやインターフェースの高音質を聴けばわかる通り、ほぼ解決済みです。この点では90年代とはえらい違いです。
だからこそ、今だからこそ、90年代の音源モジュールのサウンドやレンジ感を存分に引き出せるのではないかと。もしかするとしょぼいと思われたNX5Rでさえも、使ってみれば新しい価値が生まれるのではないかと。

そういう意味合いで、NX5Rもさることながら、あの時代を謳歌したSC-88Proをまさに音源としてストックしておきたかったのです。何度も言うように、これらの音源にはあの時代特有の、デジタル的な臭みがあります。アナログのヴィンテージ・シンセや現行の生っぽいモデリング音源とはまったく別次元の、90年代サウンドが一杯詰まっていると思えるのです。

コメント