侘びの世界へ―Flower's Topology

「悲しみのバルテュス」のレコーディング〈1〉

Pro Toolsで録られた伴奏のパート
Cubaseで先月打ち込んだ「悲しみのバルテュス」(Balthus de tristesse)のピアノ音源録りを先日終えました。
この曲の制作の経緯については、当ブログ「追悼から追憶へ―『悲しみのバルテュス』」をご参照下さい。

「悲しみのバルテュス」は2分半ほどの、ピアノを伴奏にしたとても静かな曲です。静かなというより、“静謐な”、という表現の方が当てはまると思います。私自身、なにかこの曲に触ることさえ緊張感の漂うような、そっとしておきたくなる雰囲気の曲なのです。

今月に入って、先月のプログラミングの段階で出来上がっていた、ピアノの伴奏とガイド用のメロディを確認し、ヴォーカルのリハーサルをしたところ、ややヴォーカルがその“静謐な”領域を飛び越えてしまう高音になるので、曲のキーを半音下げ、ロ長調に決めました。

Pianoteqでの擬似マイクの設定
煌びやかなパッド音で始まるこの曲は、ピアノの音像がヴォーカルを包み込むかたちになるのが理想と考え、今回のレコーディングにおいて、ピアノで使用したモデリング・ソフトウェア音源「MODARTT Pianoteq 5 Pro」での発音の微調整は、念入りにおこないました。
プリセット音源はD4(Steinway Dグランドピアノ)で、具体的な微調整としては、デフォルトの擬似マイクロフォンU87を、もっとレンジ感のある(プロのピアノ録りの選択肢では名高い)SCHOEPS CMC6 MK4に替えました。これは後日行われるヴォーカル録りでのマイクロフォンの音色のバランスを考慮してのことです。

パッド音で使用したRAZOR
パッド音は、REAKTORのRAZORです。たった1音にもかかわらず、この煌びやかなパッド音の効果によって、幻想的な世界を醸し出します。ただし、私はこの曲に関しては、幻想と現実との区別のつかない時間の流れをイメージしました。永遠なのかあるいはどこかで途切れてしまうのか、それすらも判然としない現在と未来とを結ぶ観念を音で表現するとき、あまり多くの音を必要としないだろう、と感じたのです。あくまでRAZORのパッド音は1音のみです。

こうして伴奏パートのレコーディングが終了し、あらためて自ら作詞した歌詞を眺めた瞬間、率直に私はこの歌詞をどう歌えばいいのか、もちろんありのままに感じるままに歌えばいいのだけれど、ここに歌を加えることにある種のおののきを覚えました。それくらい、私はこのなけなしの「悲しみのバルテュス」という曲に、重たいものを感じます。

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