侘びの世界へ―Flower's Topology

「悲しみのバルテュス」新たな音像

 【audio-technica ATH-R70x】
Utaroが歌うオリジナル曲、11.13鎮魂歌「悲しみのバルテュス」を公開しています。

当ブログ前稿の「『悲しみのバルテュス』のリアリズム」ではミキシングについて書きましたが、そのミキシングについての補足とマスタリングについて今回書くことにします。

実は「悲しみのバルテュス」のミキシングから、オープン型リファレンスモデルのヘッドフォン、audio-technica ATH-R70xを導入して使っています。
私のヘッドフォンの使い方についてまず整理しておきますが、これまでレコーディングからマスタリングまで一貫してヘッドフォンはAKG K271MKIIを使用していました。もちろんモニタリングとしてはあくまで併用であり、モニター用のスピーカーはJBL MODEL 4312M IIです。

まずAKG K271MKIIについてですが、レコーディング用としては申し分なく、そのソース(あるいはその他のノイズ)を強調して聴き分けることができるので、録る上での聴感的な失敗がありません。
この流れを受けて、そのサウンドを聴き慣れているせいもあって、ミキシング以降もこのヘッドフォンを使用していたのですが、今年の夏、一つの問題にぶち当たりました。

それはミキシング以降におけるヌケとリミッティングの関係の問題で、それについては当ブログ「ダイナミック・レンジという魔物」「マスタリングで変わる空気感」で詳しく触れています。
結果的にこの問題を解決させたのが、audio-technica ATH-R70xです。すなわちAKG K271MKIIはあくまでレコーディング用であり、ミキシング以降のモニタリングをATH-R70xに換えることによって、音像の細緻に至るまで調整することが可能となりました。

ATH-R70xでのモニタリングは言わば、最適にチューニングされたスタジオ・ラージ・モニターで聴いている条件に近いのです。
今回の「悲しみのバルテュス」のピアノとヴォーカルのコンプレッションにおいては、あらかじめイメージしていた音像に近づけるべく、それぞれのアタック・タイムとリリース・タイムを好ましい位置に調整させるのに、ATH-R70xははっきりとその音の違いを露わにしてくれました。これははっきり言って、AKG K271MKIIではできなかった芸当です(もともとレコーディング用のヘッドフォンなので仕方ありません)。

【OZONE 7でのリミッター設定】
この細緻の調整によって、微妙なヌケの問題(EQをどの程度施すかという問題)がミキシングの段階で見事に解決され、ややたっぷりめの音像をマスタリングの段階でしっかりリミッティングするという連携が取れました。以前は、ミキシングの段階でソースのアタックの音像が精確ではなかったため、それがマスタリングでのリミッティングに課題を残す形となっていたのです。

私は古いタイプの人間なので、ヘッドフォンというのはスピーカーとは音像が違って聴こえるのだよ、という先入観があります。ただし、ATH-R70xに関しては、その先入観を捨ててミキシングすべきだと感じました。低域がどの周波数で出ているかの判断、中域のハリとコシ、高域の伸びの推移など、ヘッドフォンであるという意識を捨ててラージ・スピーカーで聴いているのだという感覚で調整をおこなうこと。ATH-R70xは大ベストセラーとなったSONY MDR-900STに匹敵するリファレンスモデルのブランドとなるかも知れません。

ということで「悲しみのバルテュス」の話がATH-R70xの話にすり替わってしまいましたが、この曲の完成には重要な役割を果たしたので、それは構わないと思います。

コメント