侘びの世界へ―Flower's Topology

ハチプロ・プロジェクト始動

オリジナル曲「rain rain rain―雨の記憶」打ち込み画面
「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクト。マルチ・ティンバー音源の名機Roland SOUND Canvas SC-88Proのみの音源で曲作りをするというプロジェクト。

SC-88Pro、“ハチプロ”と聞いて多くの人が思い浮かべるのがレイ・ハラカミさんではないかと思うのですが([Utaro Notes]ブログ「レイ・ハラカミと作る音楽の思考」参照)、このプロジェクトの初っぱなではまず、ハラカミさんがハチプロ音源でどうアプローチしたかを理解したいと思い、少し“それらしい”曲を打ち込んでみました。さすがにピッチ・ベンドを多用すると、もろハラカミさんの曲を真似ることになってしまうのでそれは避けることにし、ハラカミさんが一つの手法としていた、ディレイを使って浮遊感を出す――というアプローチを追体験してみることにしました。

曲名は「rain rain rain―雨の記憶」(Utaro作詞・作曲)。アコギのコード・プログレッションにハチプロのインサーション・エフェクト“Stereo Delay”がかかったイントロ。
打ち込んでからディレイをかけるのではなく、あらかじめディレイをかけておいて打ち込みました。

ハチプロ実機に使われたCANAREケーブル
ハラカミさんも「ディレイありき」だったそうです。ちなみに彼は、システム・エフェクトの“Pan Delay 1”をよく使っていたらしく、ハチプロのディレイ音に対して「ヌケがすごく良い」というようなことを言っていたようです。ハチプロのエフェクトの構造は、おおまかに2タイプあって、一つは個別のパートに挿入するインサーション・エフェクト(64種類)、もう一つがセンドの数値で送り込むことのできるシステム・エフェクト(リバーブ系8種、コーラス系8種、ディレイ系10種)があって、インサーション・エフェクトをかけつつ、システム・エフェクトにセンドすることもできます。“Pan Delay 1”はこのシステム・エフェクト内のディレイに当たります(“Pan Delay”は1~4の計4種類)。また、2バンドのイコライザーもあって、パート別にON/OFFすることができます。イコライザーのパラメーターはLowが200と400Hz、Highが3kHzと6kHzとなっています。

さて、「rain rain rain―雨の記憶」の打ち込み作業はいつもどおりCubase Pro 8で、この段階ではVSTのSOUND Canvas VAを使って計5パートを打ち込みました。SOUND Canvas VAはとても使い勝手が良く、当然ながら実機よりも素早い音色切り替えやエフェクト設定ができます。
アコギのパートに挿入した“Stereo Delay”ですが、やはりヌケが良く、気持ちいい掛かり方になります。フィードバックのモードはCrossで、左が360msecで右が500msecという数値にしました。この左右の数値によって独特のリズムが生まれ、ここから算出してテンポを確定しました。まさに「ディレイありき」のやり方です。

Pro Toolsで録られたハチプロ実機音源の各パート
Pro Toolsでのレコーディングでは、プロジェクトのルール通り、実機の音源を使いました。2年前に購入して以来、ハチプロの実機には、古い安物のケーブルをつないでいましたが、今回2本のケーブルを買い換え、CANAREのQC01をアナログ・ミキサーMackie 1604-VLZ3に送りました。ハチプロのアウトはRCAなので、ケーブルはRCA/フォン仕様となります。
Pro Toolsへの入力時にはコンプを薄めにかけ録りしましたが、各パートのSOUND Canvas VA上の設定を実機で完全に再現した上で録っているので、アコギのディレイの掛かり方などもほぼ同等だと思われます。VSTの音源ではやや透明感がありましたが、実機からアナログ・ミキサーへ、そしてデジタルI/Oでコンプをかけ録りした段階での質感は、ヌケの良さはそのままで、やはり少し芯が太くなった音となり、これもほぼ予想通りでした。

このように、プロジェクトの最初の実験段階を終えたのですが、いわゆるVSTでの打ち込み作業、それからレコーディングでの実機を使ったアウトプットの録り、という作業のいずれもうまくいきました。この段階までに感じた、個人的な感想をいくつか述べたいと思っていましたが、それは次回に譲ることにします。

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