侘びの世界へ―Flower's Topology

実験色から純粋な創作へ

「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクト。オリジナル曲「rain rain rain―雨の記憶」のレコーディングについて。

私がまだ20代だった1996年当時、Rolandから発売されたSOUND Canvas SC-88Pro(=ハチプロ)は定価89,800円と高価で、高嶺の花でした。シーケンサー主導で制作していた当時としては、外部の音源モジュールがどうしても欲しくなる衝動を抱えており、同じ頃にKORGからNS5R(64音ポリ/32パート、12MBサウンド・メモリー)が発売されましたがこれもまた69,800円と高価で手が出せず、4年後にようやくKORG NX5Rを購入することができました。が、KORG独特の音源性と当時の自身の音楽性とが噛み合わず、かなりブルーな気分になって創作意欲が減退…という経験をしました。

今更になってようやく、ハチプロの音に出会うと、当時これを最初から持っていたらと思ったりします。スタンダードなアコースティック系楽器、電子楽器、シンセの音色を含めた1117のプリセット音色と42のドラム音色の膨大な音のカタログは、作曲の段階で創造を刺戟し、さらにエフェクト処理による音像の変幻によって着想が次なる着想を生み、音楽に携わることの至福を感じたに違いありません。これは昨今の特化したソフトウェア音源をいくら組み合わしても体験できない感覚だと思います。

当初、実験をするつもりで始めた「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクトは、「rain rain rain―雨の記憶」を作り上げる過程で、少し意味合いが変わりました。もともとシーケンサー+外部音源モジュールというスタイル(というかシステム)で制作していた私にとって、ハチプロという音源モジュールはとても馴染みやすいし、作曲からアレンジしていく過程でのこのスタイルがある意味、完全無欠のように思えてくるのです。

もちろんこのプロジェクトではハチプロ以外の音源は使用しないというルールですが、私の今後のスタイルの定番は、どうやらCubase+ハチプロ(VSTプラグイン)となって、これにプラスアルファとしてその他のソフトウェア音源、あるいは外部のシンセサイザーという形になるのではないかと思います。

ヴォーカルの数テイクのオーディオ・クリップ
さて、「rain rain rain―雨の記憶」のレコーディング。打ち込みの段階からもはや実験的な気持ちから解放され、純粋に曲の創作に没頭してしまったのですが、“雨”をテーマにした曲ということで、事前にハンディ・レコーダーZOOM H2nを使って実際に屋外の雨の音を録り、それをギターのイントロの前にインサートしました。

ヴォーカル録りでは、マイクロフォンLEWITT LCT 550を使用し、薄めのコンプをかけています。最初のテイクで即興的にヴォーカルを入れ、どこでどう歌うべきかを把握した後、2テイク目から“歌詞のない”スキャットを吹き込んでいきました。

打ち込みからレコーディングまで、ハチプロをシステムに組み込んだおかげで、本当に気持ちの良い創作ができ、これが実験曲であること自体、いい意味で吹っ飛んでしまった、というわけなのです。

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