侘びの世界へ―Flower's Topology

「rain rain rain―雨の記憶」のミキシング

air MULTI-DELAYエフェクト
「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクトで制作したオリジナル曲「rain rain rain―雨の記憶」のミキシングについて。

この曲のイントロのアコギのフレーズ、左右に飛び交うディレイ・エフェクトがかかっているのは、ハチプロ(Roland SC-88Pro)のインサーション・エフェクト“Stereo Delay”(+原音)とPro ToolsのミキシングでAUX送りした“MULTI -DELAY”エフェクトのプリセット、“Percussive Delay”との複合によるもので、これに多少のリバーブ(Lexiconのプレート)をかけてできたものです。

これを聴いて思い出したことがあります。昔、YAMAHAのシーケンサーQY-700で山下達郎さんのカヴァー曲をプログラミングした時に、アコギの16分音符が続くフレーズにところどころブラッシング・ミュート(ゴースト・ノート)をひとつひとつ打ち込むのにたいへん苦労して、デュレーションの付け方で変化を加えるのにとても時間を要したことがあります。そしてそうやって人工的にプログラミングしても結局、音楽的にリズムとうまく馴染まない、というような経験がありました。

air CHORUS
ハチプロでアコギにディレイをかけた状態で鳴らし、コード・プログレッションとシンコペーションを同時に作曲するという手法。まさに「rain rain rain―雨の記憶」の作曲はそこから始まったわけです。ブラッシング・ミュートをちまちまと時間をかけて打ち込むより、どれほど容易で音楽的か。

この曲のヴォーカルは、実は3つのトラックに分けて録られたもので、それぞれかけられたエフェクトが異なっています。“意味不明なスキャット”を歌っているヴォーカルにかかっているのは、“CHORUS”のプリセットの“Slow Stereo”で、先述した“MULTI DELAY”エフェクトのプリセット、“Percussive Delay”とLexiconのリバーブも少しかかっています。Lexiconのプレート・リバーブではプリ・ディレイ値もエディットされているため、リバーブ自体もディレイがかかっているわけです。

このように、主要なパートをディレイ尽くしすることによって、雨の連続性やリズム感を演出し、音の無限性についても感じられるかと思います。

Lexicon PCM Native Plate
しかし、この曲のミキシングで一番重要だったのは、アコギのアタックを残すことと、それぞれのパートの低域の処理。
まず曲の始め雨の実録音(SE)にはコンプレッションで上がってしまった低音が多く含まれていたのでこれをカットし、ヴォーカルその他のパートの80Hz以下についてもそれぞれ適切な量をカットしています。
ただし、バスドラの音は重たい低域感が欲しかったので、低域はいじりませんでした。ハチプロの音源は意外なほど周波数レンジが広く気持ちの良い音で、そのためクリアでありながら幾分かの柔らかさを持ち合わせています。当然、削ればシャープにもなり、非常に臨機応変に処理がしやすい音源なのです。

何度も言うように、「SC-88Pro ハチプロで創る。」プロジェクトは当初、SC-88Proを使うということの単なる実験のつもりでした。が、ハチプロの使いやすさと音の魅力の影響を受け、知らず知らず作曲に没入していって純粋な創作作業になっていってしまいました。
逆に言えば、作曲に没入できる音源というのは、とても大事なことだと思います。そういう音源と今回巡り合うことができ、なおかつ今後も継続して使っていくと思うので、よりいっそう新しい発見の機会があるかも知れません。

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