侘びの世界へ―Flower's Topology

「It Comes Love That Hangover」での即興的構築

「It Comes Love That Hangover」のオーディオ・クリップ
「舞踏のための音楽プロジェクト」第3弾は「It Comes Love That Hangover」というタイトルの曲で、とても軽快な曲となります。

最初にこの曲のベーシックなリズムを打ち込んだ小型シンセ、Teenage Engineering OP-1は、今年の3月に完結した「OP-1を使ったサウンド・インスタレーション」などでかなり使い込んでおり、すっかり懐知れたシンセでもあるのですが、こちらはさらに多様性のフェーズを上げ、そのベーシックなリズム隊に対し、Roland JD-Xiでの装飾的なフレーズやパーカッションをオーバー・ダビングして付け加えたものとなり、相互の特徴的なサウンドがうまく噛み合ったのではないかと思っています。

Roland JD-Xi
そのOP-1で、何の脈略もなく、まずテンポを設定し、それからリズムにおける反復的なフレーズをある程度即興を交えながらOP-1内に記録し、それに合わせてさらに2トラック多重録音して、計3トラックで出来たベーシックなリズム隊は、この段階において、後々ダビングされて積み上がっていくある種の強力なグルーヴをまったく想像すらもしていません。それが作曲のマジック、あるいは作曲の不思議な現象と言えるのかもしれませんが、このベーシックなリズムを打ち込んでそれをしばらく放置していた中で、ある時、“二日酔いのパフォーマンス”というコンセプトが頭に浮かび、JD-Xiでダビングしている段階には既に、そのコンセプトを意識して演奏しています。こうしてPro Tools上のオーディオ・トラックの数は、合わせると6トラックとなりましたが、実際に聴こえてくる音色の数はそれを上回っています。

「舞踏のための音楽プロジェクト」で括られたすべての曲のサウンド、すなわちある程度共通した質感のサウンドを作り出すため、録りではNeve 88RSプラグインのチャンネル・ストリップで処理すること、ミキシングでは概ねWaves SSL 4000Eプラグインのチャンネル・ストリップを使用、という自己ルールを設け、これに沿ったかたちで作業を進めます。
「It Comes Love That Hangover」のレコーディングでも、OP-1のベーシックなリズム、それからJD-Xiのいくつかのパートの処理もNeve 88RSプラグインが使われました。ちなみにこの曲の制作の場合、一切MIDIデータを扱っていません。すべてオーディオ・クリップ単位の作業です。

もし、この曲をあらためてMIDIプログラミングでやるとしたら、大変なことになります。すべてのパートを分解し、スコアを起こして、一つ一つ打ち込んでいったら、かなりの時間を要するでしょう。トラックの数も倍以上になると思います。OP-1プラスJD-Xiというシンセの組み合わせは、もっと利便的に合理的に、むしろ音楽の創造に富んだ素晴らしいパートナーであると私は実感しています。

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