侘びの世界へ―Flower's Topology

「ego and nal」さらなるダビング

【「ego and nal」のPro Tools画面】
前回お伝えした「『ego and nal』のレコーディング」の続き。

3月末の時点で、シンセRoland JD-XiとKORG minilogue(1パートのみ)を使ったダビングを終え、ミキシングの行程に突入するつもりでしたが、客観的に何回か聴き直しているうちに、もう少しパートを増やした方がいいと感じ、今回さらにYAMAHA MOXF6を使って、サウンド・エフェクト的な要素のパートを5つほど追加しました。ここまでで計19パートのトラックとなっています。

MOXF6の総音色数は、ひっくるめると、1,152ノーマルボイス+72ドラムキットということになっており、特にスタンダードな楽器の音色がほとんど網羅されているのはたいへん重宝します。今回追加したパートはサウンド・エフェクト的なものでしたが、こういう音色が欲しい…とイメージした音色を手早く見つけて演奏する上では、この手のシンセがないとちょっと苦労します。以前より、私が所有しているRoland SC-88Pro(通称ハチプロ)もこうした扱いが最大のメリットとなりますが、MOXF6の方は作業上、メインのMIDIキーボードともなっているので、こちらの方が手早さでは上回ります。おそらく今後、自身のシステムの中で、こうしたシンセの使い分けや役割分担が慣習化されるのでは、と思っています。

【「ego and nal」のレコーディング・シート】
レコーディングの作業においては、昔からずっと、“レコーディング・シート”なるものをあらかじめ用意しています。このシートには、レコーディングの際に一つ一つパート名を書き込んで、どの機材のどのプリセットを使ったか、またそのデフォルトのプリセットを変更した場合はどこの設定をどういじったかを別途の紙に記録したりしています。生録をおこなった場合でも同様で、パート名、使ったマイクロフォン名、アンプ名、コンプの設定数値などを書き込みます。

この“レコーディング・シート”は、アナログ・ミキサーとテープ・レコーダーを使っていた頃の名残であり、プロの現場ではごく当たり前に作成するものです。マルチ・トラック・テープのどこにどんなパートが録音されているのかを記録しておかないと、第三者がテープを扱った際に何がどこに録音されているのか皆目見当もつかなくなるからです。そしてまた別の目的では、これがそのスタジオで作業したことの記録明細にもなります。

昨今の個人の自宅録音では、DAWのプロジェクト・ファイルにおける“保存”によって、“レコーディング・シート”の必要性は薄れたかにも思えますが、私はやはり、紙の記録の作成と保存は怠ってはならないと常々思っています。そこから自身の創作の手がかりが発見され、後々の作品でたいへん役に立つ、ということがしばしばあるからです。
実際私は過去にやった“レコーディング・シート”を見て、ああ、あの時はこういうテクニックを使ったんだな、とか、あの曲のあの音はこういう設定でああなったんだな、ということがだいたい分かり、技術向上のための反省の材料になるわけです。

今回の「ego and nal」という曲は、追加追加のダビングでパートが増え、当初の構想とは少しかたちが変わった面があります。こうしたダビングを重ねることによって、もともとアグレッシヴであったリズムに、より深みが出てきたように思うのです。

次回へと続く。

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