侘びの世界へ―Flower's Topology

「ego and nal」の煮こごりサウンド

【Waves EMI TG12345】
前回からの続きで、オリジナル曲「ego and nal」のミキシングについて。

実は今回のミキシングにあたって、ちょっと実験してみようと思ったのは、日頃あまり使わないプラグインのコンプやEQをそれぞれのパートで使ったらどうなるか、だったのですが、やってみてすぐさまやめました。
とても繊細な話なのですが、日頃あまり使わないコンプやEQで「イメージしている音」を再現するのに、時間がかかってしまう…。それはほんの数分の違いかも知れないけれど、その数分の違いは、ミキシングという作業で重要な「全体の音像作り」の組み立て方や効率を損ねてしまうことになる。特にリズム系のパートのまとまり感を出すには、それぞれのパートの処理をテキパキとこなし、複数のリズム系パートのバランスを図らなければならないので、いちいち一つのパートに時間を要している場合ではないのです。慣れたコンプとEQによって、そそくさと処理していった方が、「全体の音像作り」に貢献します。

【アクセントとなるパートに挿したLo-Fi】
私にとって慣れたコンプとEQというのは、もうお馴染みの、UNIVERSAL AUDIOのNeve 88RSであり、WavesのCLA-76(リビジョンBLUEY&BLACKY)であり、API 550Bであり、それからSSL4000Eと4000Gのチャンネル・ストリップです。
今回の「ego and nal」のミキシングでは、ほとんどすべてのパートで550B→CLA-76という組み合わせで処理をしました。私にとってこれがいちばん処理の効率が良い…。

この曲で基礎のリズムとなっているOP-1シンセのパートは、中域を軽くカットし、12kHzをシェルで少しブーストし、低域はいじらず。コンプ処理はアタック遅めでリリース速め。後付けのダビングで加えたJD-Xiシンセによるスネアも似たような処理で、ハイハットやシンバルに対しては、低域のあたりを削ってすっきりさせた上で、コンプ処理はややアタック速め、リリースやや速めの処理。こうすることで、基礎のリズムの音像よりもハイハットやシンバルの音像の方がその内側で小さくまとまり、サウンド自体もシュン、シュン、シュンといった鈍い金属音のような感じになって、わざと基礎のリズムの高域とぶつからないようにしています。

【ミックスのサウンドを呈するJ37 Tape】
この曲では1パートだけ、アクセントとなるKORG minilogueのシンセ・オルガン的なメロディが入りますが、これにはディストーションを加えるため、Lo-Fiというプラグインを使いました(これにWaves Reel ADTを加え、サウンドをやや揺らしている)。これは私にとって、日頃あまり使わないプラグインですが、こういう場合には効率関係なく時間を要してでも使って処理します。
つまり、先のコンプとEQの処理とは意味合いがまったく異なるのです。また、今回はミキシング上ではまったく使用しませんでしたが、リバーブやディレイなどのプラグインに関しても同様、日頃あまり使わないプラグインを敢えて使ってみることが多々あります。

さて、全体のパートが最終的に通過するマスター・トラックでは、EMI TG12345→SLATE DIGITAL VBC FG-RED(モデルはFOCUSRITE REDコンプ)→J37 Tapeというプラグインを挿しました。もちろんこれらは、トータル・コンプとしての処理とアナログ・テープの位相感・歪み感を付加した役割を果たしています。ちなみにJ37 Tapeのテープ・フォーミュラは“811”。3タイプを比較試聴した上でこれに決めました。
このマスター・トラックに挿した3つのプラグインの組み合わせ。このサウンドは個人的にかなり気に入っています。トータル・コンプのアタックの感じ、リリースの微妙な効き具合。それとEMIらしさ。言うなれば、アナログ&デジタルのハイブリッドな「煮こごり」的サウンドです。

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