侘びの世界へ―Flower's Topology

egoから「Gender」へ

【レコーディングされたオーディオ・クリップ】
今年の1月に終わった制作「舞踏のための音楽プロジェクト」の個人的な置き土産として、ジャン・ジュネや“ジェンダー”に関連した、イマージュとしての音楽をやってみようと思ったのは、とても音楽に刺戟を与えるものだと思います。いま手掛けている2分弱の「Gender」という曲もそのうちの一つです。

男女の社会的文化的性差=“ジェンダー”に関しては、このところ個人的に想起するものが多々あります。尤もこれは、昨今たいへん頻りにシェアされているトピックでもあるからです。もし現代のアーティストやミュージシャンと呼ばれる多様な世代の人達が、この“ジェンダー”の問題に無関心であるならば、その人達はきっとまだ、本物のアーティストやミュージシャンではないと思います。言わずもがな、世界の通史の著名なアーティストやミュージシャンはほとんどと言っていいほど、この“ジェンダー”の問題に関わりながら、作品を生み出しています。

しかしながらこれは、殊更取り立てて重いテーマであるととらえる必要もありません。あくまで日常的な、どこにでも横たわっている問題の一つとして、少なくとも私はそれを掬い上げて音楽にしてみようと思っているだけなのです。

【シンセOP-1。基礎のリズムで使用】
2分弱のオリジナル曲「Gender」は、Teenage Engineeringの小型シンセ「OP-1」で打ち込んだリズム(OP-1内の仮想テープ・レコーダーに録った)を基礎にした、どことなくヒップホップ的なノリの、やや不安げな雰囲気のある曲です。例によってRoland JD-Xiを使って各種パートのオーバー・ダビングをおこないました。

この曲を作るにあたっては、“ジェンダー”というテーマから想起されるもの、それを音楽的なものにコンバートする手筈として、あらかじめこのようなメモを書いておきました。

《記憶から消えてゆく音 意志をもって残してゆく音 消されてゆく性 残された性》

これを頭に据え置きながら、OP-1のスイッチを入れ、リズムの演奏をおこなったのです。
――この制作の最中、私は屋外でとても象徴的なシーンに出合いました。ある雨の降る夕方、若い青年が雨除けのためか頭にタオルを頰被りして、婦人用の自転車(後方に大きな買い物カゴが取り付けてある)に乗って去っていきました。はたから見れば、女性が自転車に乗って走っているとしか思えない光景なのですが、若い青年はそんなことを気にもせず、無頓着に普通に去っていきました。

視覚として目に飛び込んでくる男と女の性差というものと、自己による自覚的な(場合によっては無自覚な)男女性の差異とは、どう結びつけられるのか、それは深い考察に駆られるような出来事でした。そういったことから、私はこの「Gender」という曲に《不安》という要素を加えたのです。

完成までお楽しみに――。次回へ続く。

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