侘びの世界へ―Flower's Topology

「知らん」のヴォーカル録り

【ヴォーカル録りしたオーディオ・クリップ】
先月のオケのレコーディングに引き続き、プチ・ソング「知らん」の制作はヴォーカル・レコーディングに突入し、昨日、無事にそれを終了しました。
オケのレコーディングでは、個別のパートをアナログ・ミキサーに介した上で、UNIVERSAL AUDIOのDSPプラグインであるNeve 88RSチャンネル・ストリップを使って処理をしましたが、今回のヴォーカル・レコーディングでは、同DSPプラグインのManley VOXBOXが大活躍しました。

使用したマイクロフォンは、チューブ(真空管)式のLAUTEN AUDIO LT-321 Horizon。チューブなので充分に温めて(時間をおいて)、電気的に音質が安定してから使用しました。
このマイクロフォンの特性は、中域から高域にかけてのプレゼンスがとても独特かつ濃厚で、そのサウンドはNeumann U67に酷似していると言われています。「知らん」のヴォーカルでは、アグレッシヴなパフォーマンスが予想され、それに見合う心地良いサウンドを引き出すためには、このLT-321 Horizonが適当だと考えました。なおかつ、掛け録り処理のManley VOXBOXが功を奏し、ヴォーカルに対して最大のアドバンテージを得ることができました。

【DSPプラグインManley VOXBOX】
Manley VOXBOXは、ヴォーカル録りのために特化した高品位なプリアンプ+リミッター&コンプレッサー+ディエッサー+EQの組み合わせであり、その一つ一つのアルゴリズムはManley Labs独自の、洗練された実機の回路がベースとなっています。
私の場合、ヴォーカルを録る際はとても気分的にナーヴァス&ハイ・テンションになり、早く本番でパフォーマンスしたいと思うことが多いので、できるだけコンプなどの設定は簡潔に手早く済ませたいと考えます。もちろんそれが設定として的確であって欲しいとも願うわけです。
VOXBOXのコンプはあらかじめ3:1に設定されており、ヴォーカルの掛け録りとしては理に叶っています。なので、あとはアタック・タイムとリリース・タイムのノブを可変し、その効き具合をスレッショルドをいじりながら調整して音像(+空気感)を決定するという、簡潔さとしてはまったく素晴らしい、まさにヴォーカル専用のプラグインなのです。
ちなみに実際、「知らん」のヴォーカル・パフォーマンスでは激しいダイナミック・レンジの動きが予想されていたので、設定としてはアタック・タイムをやや速め、リリースを長めにすることで、粒の揃ったサウンドになりました。

それから、LAUTEN AUDIO LT-321 Horizonの高域のプレゼンスは本来とても美しいのですが、この曲のパフォーマンスにおいては少々耳障りとなるため、VOXBOXのディエッサーでそれを軽減しました。EQは今回使用しませんでした(入力前のプリアンプの箇所でロー・カットだけはしています)。

このようなVOXBOXの設定で、結果的には、本番におけるあらゆるパフォーマンスにもすべて対処できました。むしろコンプレッションの設定云々を気にすることなく、パフォーマンスに集中できたとも言えます。おかげで予定外の箇所のパフォーマンスが加わり、テイク数が増え、作品としては思わぬ波及効果をもたらしてくれました。

「知らん」におけるヴォーカルは、幾分、“パラノイア”の世界を漂うようなところがあります。そしてそれは、常軌を逸した言語の《アナグラム》の要素も所有しています。不思議な世界です。言葉の意味を超えて、内的に訴えかけてくる何かがあると、私は感じます。

次回へ続く。

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